2016年02月13日

ちょっとした話・6







イツキの行動に驚いた顔をしているのは男たちだけではなく、
隣に座っている沼原も、そうだった。
自分たちを助けてくれようとしているのは解るが、そんな大金、簡単に用意出来るものではない。
何か、言いかけようとする沼原に、イツキはいいから、と手をかざし、
通話を続けた。



「…ごめんなさい、俺、ちょっと…トラブルに巻き込まれてしまって…。
三十万、…借りてもいいですか?……ん、……今すぐです。
…えっと、多分、近くです。……なんとかファイナンス…、中央ファイナンスって…ガラの悪い所…。
解りますか?……ええ、すみません……」



時折、困ったように、照れたように、笑いながら、イツキは通話を終える。
そして、男たちを見据え「…10分ぐらいで来ます」と、言う。







部屋の扉が開き、入って来たのは、やはり人相の悪い、白スーツの男だった。
どうやらここのボスらしく、男たちは勢い立ち上がり深々と頭を下げる。

「…ああ、いい。続けろ」


黒メガネはそう言って、奥の、自分のデスクに向かう。
街で難癖を付け少女を連れ込み、あれこれいかがわしい交渉をしているのは、日常茶飯事だった。

男は立ち上がったついでにと、気を取り直し…
足で、テーブルの縁を蹴飛ばす。
沼原たちは、きゃあと叫び、身を寄せ合うも、肝心のイツキは一向に動じず。



「……お前、ふざけてるんじゃねぇぞ。どこに電話掛けてたんだよ!」
「もう、来るよ!お金、払えばいいんでしょ!」


そう言ってイツキは不機嫌そうに頬を膨らませ、顔をふいと横に向ける。
すると奥にいた白スーツの男と視線が合い、なんとなく癖で、頭をぺこりと下げてしまった。




posted by 白黒ぼたん at 23:00 | TrackBack(0) | 日記
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