2016年02月18日

ちょっとした話・10







「……マサヤ、……早く、…済ませて。……帰りたい…」


怒鳴りつける男を前に、イツキは小さくなり、黒川にそっと懇願する。
けれど黒川は煽る様に、一度男を見上げ、また楽しそうに鼻で笑うばかり。


「そもそも、お前、何で、こんな辺りに来たんだ? 反対側だろう?」
「…お店、探してて…、迷っちゃって……」
「店?」
「…和菓子屋さん。…この前の、塩豆大福の……」
「…馬鹿か。…あれは、南口の………」


「…テメエ、聞こえぇのかよ……ッ」



黒川とイツキの話の途中で、ついに堪え切れなくなったのか…
男は、黒川の胸倉でも掴もうかと、手を伸ばす。

けれどその手は、虫でも払う様に、いとも簡単に払い退けられてしまった。



「ウルサイ。聞こえている。…ああ、迷惑を掛けたな、金ならくれてやるよ」



そしてようやく黒川も、この茶番に飽きて来たのか。
その頃には、奥にいた白スーツの男も心配げに、ソファの傍まで寄って来ていたのだが、

黒川はその男ごと、射殺すほどの鋭い視線で睨み、スーツの内ポケットに手を伸ばす。




銃か刃物か、
そんな物が出て来そうで、男たちは身構える。


しかし、黒川が出して来たのは厚みのある茶封筒で
それを、ばさりと、テーブルの上に投げつけた。



posted by 白黒ぼたん at 23:00 | TrackBack(0) | 日記
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