2016年03月04日

簡単な罠・1






試験が終わって数日して、イツキは、加瀬に呼び出された。
副理事に直接呼び出される程、悪いこともしていない。
職員室の向こうの、個室の扉の前で、イツキは憂鬱なため息を付く。
悪い予感しかしなかったが、それは、ほぼほぼ、間違いではないだろう。



「どう、イツキくん。テストは出来た?」
「……ええ、まあ…」
「まだ全教科、まとめてないけど…、…梶原くん、トップみたいだねぇ。…あんなクラスでよく勉強できるよねぇ…」


そう言って、自分とはまるで関係のない事のようにクスクス笑う加瀬を、イツキは冷ややかな目で睨む。


「…今日は、…何ですか?……俺に何か用ですか?」
「うん?…いや、テストも終わって少し落ち着いたからね。一緒に食事でもどうかなって…」
「行きません」
「そう、つっけんどんに断ることもないだろう?ほら、クラス替えでガッカリさせちゃったからさ、お詫びも兼ねて……」
「結構です」



イツキはきっぱり言い切り、膨れっ面のまま、視線を逸らせるのだけど、
もちろんそんな事は、加瀬の予想内だった。
加瀬は自分の椅子から立ち上がり、イツキの傍へと歩く。
すぐ横に立ち、身を屈め、イツキの耳元に唇を寄せる。



「…今日の、8時に。…君が最初に私を誘った料理屋においで。
…それ次第で、試験の順位に影響があるかも知れないよ?

君も。…梶原くんも」



と、およそ教師らしからぬ言葉で、イツキを誘うのだった。




posted by 白黒ぼたん at 23:00 | TrackBack(0) | 日記
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