2016年03月05日

簡単な罠・2







「あはは、冗談だよ、冗談。ああでも言わなければ来てくれないだろう?」


約束通りイツキが料理屋に現れると、加瀬は上機嫌に笑ってそう言う。
店の二階には宴会などが出来る個室があり、イツキはそこへ通される。
テーブルの上にはすでに刺身や、鍋用のコンロが置かれ、その隣には白い薄紙に包まれたいかにも高そうな日本酒の一升瓶が置かれていた。


「君とゆっくり話がしたかったんだよ。…最初はビールにする?…すぐ、こっちにする?」


うっかり美味しそうな料理や、一升瓶を見つめていたイツキに、加瀬は尋ね、イツキは慌てて顔を上げる。
急いで真面目な顔を取り繕っても、若干、遅い。


「良いんですか?学校の先生が、未成年にお酒、勧めて…」
「あはは、今更そんな事、言うんだ?やっぱり面白いね、君」


加瀬はイツキに構わず先に席に着き、乾杯用にとビールを用意する。
鍋の蓋を開け中を覗くと、具材が彩り良く綺麗に並んでいて、思わずニコリとする。


「まあ、座りなさい。私とは、懇意にしていた方が良いでしょ?」




そうしてイツキは渋々ながら、加瀬の向かいの席に座る。

学校でいくつもの権限を持つ加瀬を味方に付ければ、確かに学校生活に有利な事もあるだろうけど、
逆を言えば、無事に過ごすのは、加瀬の裁量に掛かっているという事だ。

イツキは、諦めたように溜息を一つつく。
黒川が仕事で数日間不在であることだけが、唯一の慰めだった。



posted by 白黒ぼたん at 23:00 | TrackBack(0) | 日記
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