2016年03月21日

営業用イツキ







黒いスーツは「仕事用」の服なのだけど、その格好自体は意外と嫌いでは無かった。
イツキは、普段は、何を着たら良いのか、解らなくて困ってしまう。
何色に何色を合わせれば良いのか、シャツの裾は出すのか仕舞うのか。
いつもそんな様子なので、黒スーツや学校の制服など、最初から仕様が決まっている服は、楽で良かった。


それでも、たまに擦れ違う人が振り返り、イツキの事を二度見などすると、
自分が何か、おかしな格好をしているのではないかと不安になる。
もしかして服を着ていると思っているのは、自分の勘違いで、
いつでも、裸で、公衆の面前に晒されているのではないかと…思う。


実際にはまるで逆で
特異の雰囲気で人目を惹いているのだけど、イツキにはあまり自覚はない。

色気を垂れ流して歩いているなどと、考えてもいないのだ。




「……待ち合わせですか?…良かったら、ちょっとお話、出来ませんか?」




ホテルのロビーの片隅でぼんやりと立ち尽くしていると、品の良い男性から声を掛けられた。
イツキはこれが今日の相手なのかと、顔をまじまじと眺めてしまったのだけど、聞いていた話とは年恰好が違うようだった。


「ごめんなさい。…待ち合わせなんです」


と、断り、ついでに、柔らかく微笑んでみせる。
男は残念そうに肩を落とし、「…お時間、ある時にでも…」と、イツキに電話番号の書かれたメモを手渡すのだった。





posted by 白黒ぼたん at 22:37 | TrackBack(0) | 日記
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