2016年03月25日

開かずの扉・2






バスルームへ続く脱衣所の扉は引き戸で、内側から鍵が掛かる様になっているが、
安全面からか、外側からでも、ツマミを爪で引っ掻くようにすれば開けることが出来た。

それでも、開かずの扉を自分から開けるのは、どうにも癪に障る。
黒川はもう一度、握り拳で、扉を叩く。


「……ああ、悪かった。言い過ぎた。……とにかく、出ろ」


まるで誠意の感じられない謝罪の言葉を口にしながら、黒川は、軽く舌打ちをする。
そして、仕方なく鍵をこじ開けようと身を屈めたところで、錠がカタンと開く音がした。

扉が開き、中から、イツキが出て来る。





「………今日は…、………マサヤが…、……言ったやつ、じゃん……」
「ああ、そうだったな。悪い、悪い」




泣き腫らした顔を不機嫌に膨らませ、イツキは、ぼそりと呟く。
黒川は、一応イツキが出て来たことで安堵したのか、冗談めかして、手をひらひらと振る。


イツキはそんな黒川をちらりと視線をやったきり、寝室へと向かう。
そこでようやく黒いスーツを脱ぎ、下着姿になって、ベッドへと潜り込む。




「…間違えただけだ。そう拗ねるなよ。…実際、この間は、西崎と寝たんだろう?
…数が多過ぎて区別がつかんよ」
「……そうだね。……それでいて、あっちが良くて、こっちは駄目って…、それも区別がつかないよ」
「まあ、気分だよ、気分。……そう、いちいち気にするな」



曖昧な言葉を並べ立て、黒川は誤魔化すように笑う。
そして、自分もベッドに上がり、壁に向かって身を丸くしているイツキを背中から抱き締める。



イツキの身体は、まだどこか湿ったまま。おそろしく冷え切っていた。




posted by 白黒ぼたん at 00:17 | TrackBack(0) | 日記
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