2016年03月27日

開かずの扉・4







黒川は少しだけ顔を上げ、イツキを見る。
イツキは一瞬、黒川を見て、またすぐに、視線を逸らせる。


「…俺、…ちゃんとやってるでしょ?…たまにフラフラするけど、でも、だから…
マサヤの言うこと、ちゃんと、聞いてるでしょ?」
「ああ、そうだな」
「今日だって……」


言いかけて、イツキは口を噤み、替わりに、涙を一つ、零す。
…数時間前の、仕事の内容を思い出したのだろう。
馴染みの、どこぞのお偉い老人が今日の相手だったのだが、少々趣味が悪く、
イツキはその時間の殆んどを、泣いたり、叫んだりして過ごしていた。

身体に傷こそ負わされてはいないが、心に深く傷が付くやり方だった。



「………別に、……大したこと、なかったけど…、………でも、や……、だったし…」

「……ああ、そうだな…」



イツキの長い間合いに、大方の予想はつく黒川はそう返事をして、横を向いたままのイツキの頬に、キスをする。
憔悴したイツキに異常な性衝動を抱くのは、何も黒川に限った話ではないのだ。



「…お前が、いてくれて、助かっているよ。…さっきは、悪かったな、イツキ」



珍しく素直な黒川の謝罪に、イツキはまた、涙を零しそうになる。
酷いことをしておいて、後で優しく接するのは、黒川の常套手段だと言うのに。

いつも、ここで流されてはいけないと思ってはいるのだけど、


こんな時の黒川は、卑怯なほど、甘い。




posted by 白黒ぼたん at 22:53 | TrackBack(0) | 日記
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