2016年05月07日

ジェラシー








「……また、横浜?」
『ああ』
「……ふぅん、解った。……じゃあ、俺、週末は戻らなくていいんだね?」
『ああ』



黒川との短い電話を切って、イツキはふんと鼻を鳴らす。
自分が不機嫌になっているという自覚は、まだ、無いのだけど。


横浜での新しい仕事が忙しいと、最近の黒川は、週の半分をあちらで過ごす。
新しく用意した事務所とは別に、泊まれる場所も、あるようだった。
横浜ではリーが、黒川の身の回りを一切を任されているのだろうか。

自分と、折り合いの悪い相手が黒川の傍にいるというのが、どうにも、気に障った。



首に縄を付け行動の全て、何もかもを支配されるのは、さすがに嫌だけれど
放り出され、あまり構われる事が無いというのも、不安になる。
ふとした拍子に、心のバランスは、簡単に崩れる。
自分は、意味の無い、価値の無い存在なのではないかと…、思ってしまう事が怖い。



手に握ったままだったケータイがもう一度鳴り、ディスプレイに黒川の名前が浮かぶと
繋がった、その一瞬が、嬉しくて、……そんな自分を戒める。


『言い忘れていたが、週末は、吉村の所に行ってくれ。一ノ宮には話してある。車で、一緒に。……メシを食うだけだよ、……はは』




そして、電話の内容がそんな事だと解ると

イツキの気持ちは一層落ち込み、酷く、仄暗い色に染まるのだった。





posted by 白黒ぼたん at 23:50 | TrackBack(0) | 日記
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