2016年05月08日

絨毯






約束通りイツキは一ノ宮と一緒に、吉村が滞在しているホテルへ赴き
本当に真面目な、仕事の用件を片付けた後で、食事に誘われる。

「……一ノ宮さんは?」
「ここから先は、私がいても仕方が無いでしょう?」
「……ご飯、…だけ?」
「ご自由にと…、社長からは言い付かっています」

そうして、少し物憂げな笑みを見せて、一ノ宮は退場する。






「まあ、そんなに構えるなよ、イツキ。取って食いやしないぜ、解ってるだろう?」


2人きりになった部屋で、吉村は笑いながら、そう言う。
確かに吉村は昔からの知り合いで、「客」の中では、とりわけイツキを大切に扱う。
イツキも吉村が嫌いではない。黒川もそれを知っている。
だからこそ何か…、やましさや、イツキに対して後ろぐらい所がある時に、誤魔化すように、吉村に会せたりする。


「黒川も、横浜で手一杯のようだな。向こうの組合長とは俺も取引があるんだが…」
「…知らないよ、マサヤが何、してるかなんて。忙しい、忙しいって…、ばっかりでさ…」
「はは。干されて面白くないクチか?もっとも、お前が黒川の手伝いで忙しくなるようなら、それはそれで、困る話なんだろう?」



吉村はスーツの上着を羽織り、ホテルの上階にあるレストランへと、イツキを案内する。


ふわふわと足元が覚束ないのは、毛足の長い絨毯のせいではなく、

何となく感じている、寂しさのせいなのかも知れない。





posted by 白黒ぼたん at 23:00 | TrackBack(0) | 日記
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