2016年05月10日

理不尽







『………何だ?』




何十回目かの呼び出しの後、やっと電話が繋がった黒川の声は、酷く不機嫌そうだった。


「…マサヤ。…何、してるの?」
『仕事だ。お前こそ、何だ?…吉村と一緒のはずだろう?』


仕事、と言う割に、黒川の周りは騒がしい。
笑い声や、女性の甲高い声。…どうやら、クラブや飲み屋や、そんな場所にいるようだった。


「…吉村さんと、ご飯、食べてるよ。…もうすぐ、終わるけど。……俺、これから、…どうしたら、いい?」
『うん?…好きにしていいと、言ったはずだぞ?』
「…俺の、好き?……それとも吉村さんの、好き?」
『どっちでも構わん。…じゃあな、忙しいから切るぞ』


そして、にべもなく、電話は切られてしまった。






トイレ、と言って、イツキは席を立ち、この後の予定を確認するために黒川に電話をしてみたのだが、
確認どころか、ただ、嫌な思いをしただけだった。
頬を膨らませ、唇を尖らせ、席に戻ると、そこにはすでに食後のデザートが並び、吉村が優しげな笑顔で待ち構えていた。


本当は、断ろうと思っていたのだけど。

もう、イツキにはその理由が、見当たらなかった。




posted by 白黒ぼたん at 23:08 | TrackBack(0) | 日記
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