2016年05月12日

口癖






「いらないのなら、俺に、譲れよ」




それが吉村の口癖だった。

黒川がイツキを粗雑に扱い、モノの貸し借りのように他の男に……、自分に、預ける時に、よく口にしていた。
すると黒川は決まって、「アレはそんなにイイ物じゃないぜ?」と言うのだけど
それならば、譲れよ、と、吉村は思う。


黒川は、本当は何よりも誰よりも、イツキを必要としているのだろう。
それが、一般に言う、恋愛感情とは違うものだとしても。
優しく想い、いたわるかどうかは別として、無くてはならない存在だというのは、確かなようだった。





「イツキ。いつでも俺の所に来て良いんだぜ?」

それも、吉村の口癖だった。
コトを終えた後、ベッドの上で、毛布に包まりながらまどろんでいるイツキに、吉村がそう声を掛ける。

「………ん。……吉村さん、優しくて、すき」
「だろう?黒川なんぞ捨てて、俺の所に来いよ」
「………ん。………マサヤ、意地悪なんだもん………」


イツキはそう言って、目を閉じる。

イツキもまた、愚痴を零しながらも、黒川とは離れられないのだと、解る。
いくら自分が抱き、尽くしてやっても、気持ちの行き着く先は、黒川なのだ。



つくづく、この2人は、
性質が悪いと、吉村は思っていた。





posted by 白黒ぼたん at 23:00 | TrackBack(0) | 日記
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