2016年05月13日

損得勘定







黒川は電話を切って、それをスーツの胸ポケットに仕舞うと、面倒臭そうに溜息を付く。
今日は、どうしたって良いと話していたはずなのに、一々確認を取られるのは煩わしかった。

それでも、多少は、イツキの杞憂が……楽しかった。
自分の事を気にしながら、他の男に抱かれているイツキは、さぞかし、良い顔をするのだろう。




「…社長、向こうからですか?…一ノ宮さんから…」


別のボックス席にいたリーが黒川の元へと戻る。
商談と接待のためにとクラブ全体を貸切り、その全般を仕切っているリーは、一ノ宮とは違う頭の良さとキレがあり、重宝していた。


「いや、違う。イツキだ」


黒川がそう言うと、解り易くリーは、嫌な顔を見せる。
黒川はそれを見て、笑い、…気付いたリーは申し訳なさそうに頭を下げる。


「構わんよ。お前がイツキを嫌いなのは、知っている」
「…嫌い、という訳ではありません。…よく解らないだけです」
「は、は。そう難しい話じゃ、ない。イツキはただ、…俺と一緒にいるだけだ」



事も無げに黒川はそう言うのだけど、その、一緒にいる理由が解らずに困っているのだ。
黒川にとっても、イツキにとっても。一体どんな損得勘定が働いているのだろうか。


奥のボックス席から賑やかな笑い声が聞こえて、リーは、そちらについ目をやる。

男に媚を売るだけの商売は好きではないのだが、それでも、席の中央に座る黒髪の、あの綺麗な顔の子は、社長の為に良く働いてくれていると思った。






posted by 白黒ぼたん at 22:25 | TrackBack(0) | 日記
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