2016年06月01日

遠くの笑顔






「おはよ、イツキ。ちゃんと来たな、偉い偉い。
歴史の小テスト、ポイント高いからな。……ん?……勉強してない?
…この間の年号だけ…、そう、この間、ノートに書いたやつ…、そう、それそれ…」


朝。
いつもと変わらず梶原がイツキに構う様子を、清水は少し離れた席から、ぼんやりと眺めていた。

イツキはノートを広げ、一時間目に行うテストの準備をしているようだが、見る限りすでに5回は欠伸をし、眠たそうに眼を擦る。

黒川の車から降りて来たのなら、おそらく、黒川と夜を過ごしていたのだろう。
それならば、イツキが眠たい理由は、一つしかないのだろう。



イツキと黒川の事は、考えても仕方のない事なので、考えないようにしているのだけど
わざわざ気に障るように、見せつけられては、心中穏やかではいられない。



「…何?昨日、寝てないの?…バカだな、何やってんだよ。…ああ、でもこの辺はちゃんと覚えて来たんだな。…うん。……半分は取れるんじゃないかな……」






傍から見ると、まるで、キスでもしているように見える。
そして、そんなに近づいてしまっては
何か…、独特の残り香に…、気が付いてしまうのではないかと、清水はヒヤヒヤする。



梶原が何かくだらない事でも言ったのか、イツキがくすくすと笑いだす。

その笑顔が、なぜかひどく遠くに見えて、清水は一抹の寂しさを感じるのだった。




posted by 白黒ぼたん at 22:57 | TrackBack(0) | 日記
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