2016年06月07日
ミナヅキイツキ・1
金曜日の真夜中。
もうじき日付も変わろうかという頃。
イツキは黒川の事務所に、一ノ宮と2人でいた。
用意された和菓子を食べ、熱いコーヒーを飲む。
「………美味しいね、これ。小豆と…、下は……」
「ういろうです。『水無月』というお菓子です。昼間、頂いたものですが…。…緑茶があれば良かったですね」
「大丈夫。……美味しい…」
イツキはフォークの先をぺろりと舐め、微笑む。
それはまるで一ノ宮に余計な気遣いをさせぬようにと、取り繕っていたのかも知れない。
つい数時間前に、黒川は車で品川のマンションを訪れ、イツキを連れ出した。
『週末は広い風呂に入りに行く』約束を、ちゃんと覚えていたらしい。
熱海、までは行けないが、近郊に、天然温泉の出る良いホテルがあるのだとか。
風呂に入り、美味しい料理を食べ、…部屋を取って2,3日過ごすのもいい、と、機嫌良く予定を語っていたのだけど
一本の電話で、すべてがフイになる。
火急の用だか、アクシデントだか、詳しくは解らないが
車を走らせてほんの数分で、黒川はあっさりと行き先を変える。
そして途中、立ち寄った事務所にイツキを置くと、
自分は一人、どこかへ行ってしまったのだった。
posted by 白黒ぼたん at 22:45
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