2016年06月08日

ミナヅキイツキ・2






「別に楽しみにしてたって程、楽しみにしてた訳じゃないんだよ。
でも、予定ってあるじゃない。心の準備って言うかさ…。
こう、急に変えられても…、すぐに、そうは…ならないよね…」


和菓子を食べ終えたイツキは、今度はコーヒーのカップを両手で持ち、
少しずつ飲みながら、そんな愚痴をこぼす。
イツキの意見はもっともだと、一ノ宮は申し訳ないような顔をして、ただ、頷く。


「最近は忙しい、忙しい、ばっかりでさ。すぐに横浜がどうのこうのって…」
「ああ、今日は横浜ではなく、池袋の……」
「どっちだって構わないけどさ!」


少し声を荒げ、そして、躍起になっている自分に嫌気が差す。
気を落ち着かせるために大きく息をついて、コーヒーを飲んで、「…別に、構わないけど…」と、自分自身に言い聞かせてみる。

理不尽な恋人の行動に心を痛める姿は、まだ年端の行かないイツキには似合わない。
そんな事は一ノ宮にも解っていたが、どうしてやることも出来ず。



「…さて。…どうしましょう。送りますよ?……品川に戻りますか?」
「……うん」


一ノ宮の言葉にイツキは素直に答え、手に持っていたカップをテーブルに置く。
そして、立ち上がり、持って来ていた旅行用の小さなバッグを小脇に抱え、扉の前まで行った時に


突然、扉が開く。
それはあまりにも近すぎて、イツキの鼻先を掠めるほどだった。





posted by 白黒ぼたん at 22:31 | TrackBack(0) | 日記
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