2016年06月09日

ミナヅキイツキ・3






「…何だ、まだいたのか?」


扉を開けて入って来たのは黒川だった。
黒川はイツキがここにいることに、意外そうな顔を見せたものの、何事もなかったように中に入り、デスクの上の書類をガサガサとやる。


「…社長。何かお探しですか?」
「ああ、叔父貴の所の契約書を…ああ、あった、これだ…。すぐに出る。下に車を待たせている。明日は叔父貴と長野に行く。」
「…はあ」


忙しなく動く黒川に、一ノ宮も若干呆れたように返事をする。
黒川は書類を揃え、置いてあった、冷えたコーヒーを一口飲んで、また事務所を出ようとする。


イツキは、扉の前で、そんな黒川の様子を眺めていた。



「……マサヤ」
「何だ?」
「 …俺、帰るよ?」
「ああ」



それだけの短い会話でイツキが納得出来るはずもなく。
頬を膨らませ、唇を尖らせ、明らかに不機嫌そうな顔を見せると…


黒川は、前を通り過ぎるがてら、軽い挨拶のようにイツキにキスをして、



「そんなに温泉に行きたかったのか?そう拗ねるなよ。
また、今度な…」



と、まるで飲み屋の女性を宥めるような言葉を掛け、
事務所を出て行くのだった。






黒川、サイテー!
posted by 白黒ぼたん at 21:48 | TrackBack(0) | 日記
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