2016年06月10日

ミナヅキイツキ・4







黒川は叔父貴と呼ぶ男の車で移動していた。

もちろん、血縁上の叔父ではない。盃で繋がった縁だ。
歳もそう変わらず、向こうは黒川に敬意を示し、そう義理立てせずともと言うのだが
黒川は頑なに、古臭い風習を守る。


「……あの子が、イツキ君でしょう?話には聞いていますよ?」
「…は、は。まあ、別段。……まあ。……まあ……」


叔父貴と呼ばれる男がそう言うと、黒川は適当に言葉を誤魔化し、
誤魔化しきれない分は、鼻で笑い、それでも足りずに、窓の外を眺めるのだった。





数分前。
黒川はつれない言葉を吐き、事務所を出る。
イツキは扉の向こうで、ただ、立ち尽くす。

『……マサヤ』

黒川が慌ただしく階段を駆け降りる途中で、イツキは声を掛ける。
下には、車が横付けされ、叔父貴と呼ばれる男は、車の中から何気に外を伺う。


『………本当に。
ちょっと…楽しみだったんだ。マサヤと出掛けるの。

………今度って、いつ?
俺、……待っていればいいの?』



イツキの言葉に黒川は振り返り、何か返事をしようと口を半分開きかけ…


面倒臭く、『…ああ』と言うだけだった。






「…あの子が君の、イイ子、って、事でしょ?だから横浜の件には絡ませないんでしょう?」
「はは。…まあ、そんなトコロです」



叔父貴の言葉を、黒川は適当に流し…

その時のイツキの顔を思い出し…、何とも言い難いくすぐったい思いに…、湧き上がる笑みを噛み殺していた。



posted by 白黒ぼたん at 23:00 | TrackBack(0) | 日記
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