2016年06月20日

ミナヅキイツキ・11






「イツキ」



こんな時の黒川の声は、本当に、とろけるほどに甘い。
狡い、と、イツキはいつも思う。


まだ半分、寝室に行こうとする身体を黒川は引き止め、イツキの手を引く。
イツキはすとんと、黒川の隣に座ってしまう。
顔を覗き込まれて、つい、背けるのは、何故か恥ずかしいからで
それは黒川も知っていて、さらに、嫌がらせのように、顔を近づける。


「…そう、拗ねるなよ、イツキ」
「…拗ねてない。…眠いだけだよ…」
「ふぅん、寝るのか?…俺が来たのに?……長野から、とんぼ返りで帰って来たのに?」



そう言われて、イツキは思わず、黒川の顔を見る。

確かに。

今日は、黒川は叔父貴とやらと一緒に、長野に行くのだと言っていた。
目的地までどれほど掛かるかは知らないが、まあ、そう簡単に行ける距離ではないだろう。
今日の朝、出て、用事を済ませて、帰ってくるのは、大変な事だろうと、イツキにも解る。



「…なんで?」



素直な疑問が口をつく。

黒川は笑い、その口に、唇を重ねる。




「…お前が、俺に、会いたかったからだろう?」




posted by 白黒ぼたん at 21:58 | TrackBack(0) | 日記
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