2016年07月03日

イツキと大野







「…お前、なんか、変わった?」
「……ん?」


夏休みを前に半分浮かれている梶原とは違い、大野はいつも通り、静かで、
食堂のベンチに腰掛け、読みかけの本をぱたりと閉じて、まじまじとイツキを伺う。


「なんだか、……穏やかになったなぁ…、なんとなく」
「そう?……別に、何も、変わらないけど」
「ふぅん?」


大野はつい、イツキの頭からつま先までを、2回も見て
イツキはそれで、無駄に、顔を赤くする。
本当に、別段何も、変わった事はないと思うのだけど。

強いて言えば、あまり…、不安を感じる事が、少なくなった…、くらいか。






先日は、黒川と一緒に、どこぞの企業のお偉いさんと、食事をした。
戸田と言われた男はイツキを、孫でも見るように、目を細め、愛で、
……それでも食後には、きちんと、する事もしたのだけど……
イツキにすれば、特に、どうという事もない時間だった。

終われば、黒川は、いつもより奇妙に優しくて
同じホテルに取ってあった部屋で、一晩を過ごした。

『悪かったな』という言葉に、相変わらず誠意は感じられないが
何というか、もう…、良くも悪くも、慣れてしまった。
黒川と一緒にいる以上、多少は、こんなことも仕方ないと……
イツキの中で、じわじわとその現実が、馴染んでしまった。




「…イツキ?」

急に押し黙ったイツキを心配し、大野が声を掛けると
イツキは我に返ったように顔をあげ、条件反射的に、大野に、微笑む。

その笑顔に、今度は大野が無駄に、顔を赤くするのだった。




posted by 白黒ぼたん at 23:00 | TrackBack(0) | 日記
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