2016年07月05日

さざ波






何事もない、穏やかな日というのは、イツキには不慣れで
何か、重大な事を見落としているのではないかと、不安になる。
黒川は、言いつけさえ守っていれば、普通に優しく接するし
学校も問題なく、…特定の教師に言いがかりを付けられる事もない。



物足りない。

などと、言う気はないが


こんな日々は、長くは続かない。




「…海も嫌、プールも嫌。…土日もダメ。……じゃあ、野外フェス、行こうぜ、平日もやってるし。
屋台も出てるし、フリマとか…、無料ライブもある…、ええっ?……ずっと外に出てるのは暑いから嫌ぁ?……お前、高校最後の夏だぜ?」


梶原の提案をイツキはことごとく断ってみせるのだが
それでもどこか楽しそうで、くすくすと笑う。
夏の日差しも、人混みも苦手だったが、まあ、夏なのだし。少しぐらいは興じても良いかと思っていた。



ふと、ポケットの中のケータイが鳴る。

着信があったようだが、イツキが確認する前に切れてしまった。

今時、あまり見ない、「公衆電話」からの電話に

胸の奥に小さなさざ波がおこり、それは静かに、広がっていくのだった。





posted by 白黒ぼたん at 23:40 | TrackBack(0) | 日記
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