2016年07月07日

火種







それは本当にタイミングが悪いだけで、別に、電話に出たくないつもりではないのだけど。
移動中や、…コトの最中や。それらが落ち着いてからケータイを見ると、公衆電話からの着信が入っていた。
そう頻度が高い訳ではない、2日に一度ほど…。
気にはなっていたが、まあ、誰かが番号を間違えているのだろうと、そう思い込むことにした。




黒川の事務所に立ち寄ると、そこには黒川以外、リーと2人の若い女性がいて、狭い事務所は混雑していた。
イツキは中に入って良いものかと、入り口で立ち止まっていると、黒川は『さっさと入れ、馬鹿』と怒鳴る。どうにも機嫌が悪いようだ。
リーは相変わらず嫌な目でイツキを見て、それから黒川と2,3、確認めいた話をして、女性を連れ、事務所を出て行く。

「……何かあったの?……あの女の人たちって…」
「売り物だ。あまり良くはないがな…。なんなら、お前も付けるか?」

と、笑いもせずに、冗談を言うのだった。



『…今日の焼肉は無しだ。…この封筒を西崎の所に持っていけ。あとは帰っていい』



そう言われ、おとなしく、それに従う。
自分が西崎に会いたくない事を、黒川は解っていないようなので…、解っていたとしても、気にはしてくれないようなので、諦める。

歩いて数分の西崎の事務所には、佐野をはじめ数名の男たちが詰めていて、その場でどうこうされる事はなさそうだったが、
書類を受け取った西崎が、いやらしく笑い、「…次はいつにする?イツキ」と声を掛けるだけでも、虫唾が走る。
特に返事もせず頭だけ下げて、踵を返す。
途中、目が合った佐野が、同情めいた視線を寄越すのも、気に障った。




何が、どう、問題がある訳ではないのだけど
どことなく…、なんとなく…、落ち着かなくて、不安になる。
胸の奥で小さな火種が、ちりちりと、くすぶっているようだった。




posted by 白黒ぼたん at 22:42 | TrackBack(0) | 日記
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