2016年07月14日

坩堝・3







黒川とは合間をみて、連絡をしていた。
黒川は、横浜だか池袋だか知らないが、また仕事が忙しい、忙しいとぼやき、
『しばらくはお前に付き合っていられない。遊ぶのはいいが、悪さはするなよ』と
そう言い、また無造作に、イツキを放り出す。

放り出したところで、実際イツキが勝手に遊べば、それはそれで怒るのだろう。



「……それでも、部屋は駄目。またね、梶原」
「…そっか。…おう。じゃあ、また………」


あまり無理強いは出来ないと、今日のところは大人しく引き下がる梶原。
マンションの入り口で手を振り、帰ろうかと身体の向きを変えたころで

エントランスの柱の影に、誰かが、立っているのを見つけた。

梶原の視線の先にイツキも目をやると、暗がりに、確かに小さな人影が見える。



「……えっ!?」



人影は、イツキと梶原の様子を伺うように、柱の向こうから顔を出し
丁度、照明が当たり、顔が解る。
若い、女性。今、家出をしてきたという風な、大きな荷物。
見覚えのあるその姿に、イツキは驚き、小さく声を上げる。




それは、イツキの妹の、由紀だった。





posted by 白黒ぼたん at 21:22 | TrackBack(0) | 日記
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