2016年07月17日

坩堝・4







「…お兄ちゃん…!」


妹もイツキの姿を確認したのか、柱の陰から飛び出し、イツキに駆け寄る。
飛びつき、腕にしがみつく様子に、イツキは驚き戸惑う。
春先に、父親の葬儀で会ったとはいえ、もう何年も連絡すらせず、疎遠になっていた妹だ。
すぐに打ち解けるどころか、こんな夜夜中に突然現れる理由など、見当たるはずもない。


「…由紀、…どうして、ここに…」
「…お兄ちゃん、帰ってくるの…遅いよ…!……由紀、ずっと待ってたのに…」
「だって、…お前……」

「…え?ええと?……妹?…イツキの妹?」


混乱するイツキの隣で、梶原も同じく混乱し、素っ頓狂な声を上げる。
そして、とりあえず、久しぶりに再会したらしい兄妹が、こんな場所で立ち話をする必要は無い、と思う。

「…ま、まあ、上がんなよ…」

と、自分の家でもないくせに、イツキと妹をエントランスの中へと手を差し出す。
そして、ちゃっかり自分も一緒に、中へ入ろうとする。


けれど、イツキはその前に立ち塞がり、努めて冷たい顔をする。



「…帰りなさい、由紀」
「…なんで?…会いに来たのに、お兄ちゃん…」
「いいから、帰りな、由紀!」
「だって…。もう、帰れないよ、もう…電車、ないもん…」





posted by 白黒ぼたん at 23:07 | TrackBack(0) | 日記
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