2016年07月18日

坩堝・5







「…そうだよ、そんな事、言うなよ、イツキ。せっかく、会いに来てくれたんだろ?


兄妹のやりとりを聞いていた梶原が、横から口を挟む。


「うるさい、梶原は関係ないんだから、黙っててよ!」
「そうだけどさ。でも、もう、こんな時間だぜ?可哀想じゃんか…」
「知らないよ、勝手に来られて、こっちだって困るよ!」
「でも、イツキ…」
「うるさい!」


「………お兄ちゃん…」



イツキは興奮し、つい、声を荒げる。
イツキにすれば、自分のテリトリーに…、自分と黒川の世界に、妹を入れることは、生理的に受け付けないのだろう。
それでも、あまりの拒絶反応に、妹は驚き、目を丸くし、
身を強張らせ、泣きそうになっている。

その姿を見てしまえば……、多少は、……情も沸く。


何の理由があるかは知らないが、自分に会いたいと、こんな場所まで一人で来たのだ。
無碍に追い返すなど、出来はずもないのだ。




「………解った。今晩だけ。……明日の朝、送っていくから。……今晩だけだよ」
「ありがとう、お兄ちゃん!」



折れたイツキに、妹は喜び、また、イツキの腕にしがみつく。
その様子を見ていた梶原は、一安心しながらも、


妹が、イツキに見えない角度で、ニヤリと、どこか狡い笑顔を浮かべたのを見逃してはいなかった。







posted by 白黒ぼたん at 23:00 | TrackBack(0) | 日記
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