2016年07月19日

坩堝・6






ともすれば一緒に部屋に入ろうとする梶原を、どうにか追い払い、
イツキは、由紀を、部屋に招いた。
そう、散らかしてはいないはずだったが…

それでも、自分と黒川が幾度と身体を重ねる場所に、妹がいるのは、良い気はしない。



「…わあ、すごい。綺麗なお部屋。…お兄ちゃん、ここに一人で住んでるの?…広いね」
「……由紀。どうして急に来たの?お母さんには言って来たの?」
「んー。…言ったよー。……こっちは?……寝るとこ?……ベッドだー」


部屋のあちこちを覗く由紀を制し、イツキは、開けられた寝室の扉をバタンと締める。
リビングのソファのクッションを、何となくパタパタとやって、そこに座るように促すと、
自分はキッチンへ入り、コーヒーなどを入れてみる。

由紀があたりをじろじろ眺めるのが、気が気ではない。



「……本当はね、夕方には来てたんだよ。でも、お兄ちゃん、いなくて。…あたし、ケータイも持ってないから…。
待ってるの、ちょっと、怖かったけど。……でも、お兄ちゃんに、会いたかったから」




イツキが入れたコーヒーを啜りながら、そう話す妹の、嘘に、イツキはまだ気づいていない。



妹は、母親に、ここに来ることなど話していない。
しかもここの住所は、母親の手帳を盗み見て、知ったものだった。
夕方から夜半まで、いつ帰るか解らないイツキを待つのは心細かっただろうが、夜を怖がるような娘ではない。
妹は、イツキと離れて暮らした数年間、多少、荒んだ生活をしていたようだった。




posted by 白黒ぼたん at 23:00 | TrackBack(0) | 日記
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