2016年07月20日

坩堝・7






リビングのソファに毛布を何枚か敷き、妹のための寝床を作る。
このソファでも、幾度となく黒川と事をしたが、寝室よりはまだマシだろう。

「…ここ何日か、公衆電話から電話してたのって、由紀?」
「…うん。…お兄ちゃんと、話がしたくて…」
「何?」
「……んー、そんなに大したアレでもないんだけどさぁ…」

口ごもり、はぐらかす様子から、あまり良い話のような印象は受けない。
用意されたソファに寝転び、窮屈そうに身体を伸ばす姿は、イツキが知っている幼かった妹のそれとは違い、少し戸惑う。

「由紀って、いくつになった?…中学、3年?」
「誕生日過ぎたから、もう、14歳。中学2年だよ」
「ふぅん…」

飲み終わったコーヒーのカップを流しに置き、イツキは、自分が中学2年生だった時の事を思い出す。




丁度、今頃。夏が始まるこの季節に、
イツキは黒川に初めて抱かれて、人生の全てを狂わせたのだ。





「……由紀。明日、すぐに帰るんだよ。……ここは、もう、来ちゃ、駄目」


すっかり憂鬱な気分になり、イツキは溜息をつき、妹にそう告げる。
妹はまた、「…んー」と、曖昧な返事をして、彼女もまた、溜息を一つついてから


「ねえ。…黒川さんに、会えないかな。…あたしでも出来る仕事みたいなのって、無いかなぁ…」


と、言うのだった。



posted by 白黒ぼたん at 23:08 | TrackBack(0) | 日記
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