2016年07月30日

坩堝・15







残念な事が、二つほど。




一つは、
イツキはすっかり黒川が、妹を連れて行ってしまったと思っていたのだが、
実は、それは、誤解だった。

社長の車を見たと言った佐野の言葉は嘘では無かったのだが、車を運転していたのは、黒川ではなく、リーだったのだ。


この日、リーは、普段黒川が乗り回している車を使っていた。それは、そう珍しい事ではないらしい。
横浜での仕事を手伝うという女の子を回収しようと事務所の前まで行ったのだが、手違いで、妹を車に乗せてしまったのだった。


黒川はと言えば、急に他の予定が入り、一ノ宮には連絡をせずに、池袋の叔父貴の所に行っていた。
別に、悪意はない。
イツキのトラブルを知るのは、もう少し、後の話。



そして、もう一つは

イツキのケータイの電池が、タクシーの中で切れてしまった事だった。
予備のバッテリーを持ち歩くなど、するはずもなく。
財布の中に数枚の一万円札が入っていたのは、不幸中の幸いだったのだけど

その程度の幸運は、この先のイツキに、微塵にも役立たない。




一時間少々の移動の車内を、イツキは、祈る気持ちでやり過ごす。
たまにえずき、吐きそうになるのは、車に酔ったからではもちろん無かった。




posted by 白黒ぼたん at 23:00 | TrackBack(0) | 日記
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