2016年08月01日

坩堝・16







イツキがタクシーに乗り横浜の事務所へ向かった、その2時間ほど前、
妹は、黒川の事務所の前に、佇んでいた。
前の晩に、イツキに、あれだけ諭されたと言うのに…、妹にはまだ、心には響いてはいなかったらしい。


『良くない仕事』と言っても、実際、そんな事に経験のない妹には、それがどんなものなのか…実感が沸かない。
むしろ、同級生の男子と服の上から身体を触り合う程度の経験では、逆に、その先を早く知りたいと、気が急いていたのかも知れない。


テレビか何かで知った、中年の男と、一緒に食事に行くだけでお小遣いを貰える…そんな仕事があればいい、と思っていた。
本当に危険な事があれば、大声を上げて、走って、逃げ出してしまえばいいのだし。





「……誰もいない?……鍵、掛かってる…」


けれど生憎、事務所には誰もいなかった。
母親の手帳を盗み見て知った住所だったが、実は、こんな昼日中に人がいるような場所ではない。

妹は溜息をつき、階段の下に座り込み、どうしたものかと思案する
さすがに何のツテもなく、この街で仕事を探すことなどは、出来そうもない。


半ば、諦め
腰を上げ、帰ろうかと…少し、思い始めていた時
目の前の道路に、黒い車が停まった。

それはリーが運転する、黒川の車だった。




posted by 白黒ぼたん at 23:00 | TrackBack(0) | 日記
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