2016年08月03日

坩堝・17






リーは予定通り、事務所に、横浜の仕事に紹介する女性を迎えに来ていた。
予定の時刻より少し早めに到着してしまったが、階段の下に少女が一人座っていたので、車を停め、声を掛ける。


「…バイトの子?」
「…黒川さんのトコの、…人ですか?」
「そう。…乗って」


短い会話だけで車に乗せてしまったのは、あまり二人で話している所を人に見られたくないためだった。
結局、その僅かな時間を佐野に見られてしまったのだけど。

そして、本当の待ち合わせの女性は、その後数分して現れる。
当然、誰が迎えに来る訳でもなく、女性は痺れを切らせ、姿を消してしまうのだった。






「……あの…、……どこに行くんですか…?」

車が走り出してすぐに、妹が、ごく当たり前の事を聞く。
リーは後部座席に座る少女の姿を鏡で見ながら、違和感に、ようやく気付く。

「横浜ですよ。…君、本当に『パピヨン』の子?…、ちょっと若すぎるんじゃあ……」
「横浜?…あ、あたし、黒川さんに会いたいんですけど…!」
「…ええ?、君、誰?」

コンビニの駐車場に車を入れて、リーは妹に話を聞く。
そして少女が、あの、イツキの妹で…黒川に仕事を世話して欲しいのだという事を知り、

とりあえず、横浜に、連れて行ってしまうのだった。




リーは、イツキに、良くも悪くも特別な感情を抱いてはいない。
裏返せば、無関心なのだ。イツキがどうなろうとも、リーには関係ない。
もし何かの事態には黒川が動き、結果、リーにも影響はあるのだろうけど。


実のところ、黒川はリーに、イツキが自分の大切な存在なのだとは、知らせてはいない。
そして黒川が見せる、イツキへの態度からもそれは中々、想像のつくものではないのだ。


posted by 白黒ぼたん at 23:54 | TrackBack(0) | 日記
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