2016年08月11日

坩堝・23







コトの真っ只中なのだし、来訪者だからと言って、そう簡単に手を止める訳にもいかない。
かと言って、こんな場所に客というのも可笑しな話だし、チャイムの連打もノックの音も尋常では無い。
仕方がなく南屋は、ビデオカメラを持っていた男に妹を任せ、様子を見に行く。
男は、妹が逃げ出さないように羽交い絞めにしながら、部屋の奥へと身を潜める。





「……どちらさん?」

ようやく、イツキの目の前の扉が、開く。

「…ここに、女の子、いる?」
「あんた、誰よ?」
「女の子、いるんでしょ?……由紀、由紀っ」

チェーンが掛かった扉の細い隙間に、イツキは身体を捻じ込み、妹の名を呼ぶ。
妹は、男の手で口を塞がれていたのだが、様子に気付いたのか…何か、かすかな物音がする。

「……誰もいないよ。迷惑なんだよね、帰りな」
「いるよ。…リーさんが言ってたもん。……お願い、その子は、違うの。間違いなの」
「ハァ?意味が解らねぇな。…手、引っ込めな。ドア締めるぜ?」
「その子は違うんだってば…、……由紀っ」

「…………お兄ちゃん…っ」




イツキが叫び、それに呼応し、妹は口を塞がれながらもどうにか声を張り上げる。
その瞬間、南屋は扉の隙間に挟まれていたイツキの身体を押し出し、ドアをバタンと締めてしまう。
イツキはのけ反り、それでもすぐにまた扉に駆け寄り、扉をバンバンと叩く。
鍵の掛かった取っ手をガチャガチャとやって、これ以上、どうすれば良いのか解らず、涙をぽろぽろと零す。





「…なんだよ、変な邪魔が入ったな…。とっととヤッて、終わらせるか」

南屋がそうつぶやき、妹の傍まで戻った時、
南屋の、ケータイが鳴った。





posted by 白黒ぼたん at 23:42 | TrackBack(0) | 日記
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