2016年08月19日

坩堝・30







電車に乗ってイツキが戻って来たのは、すでに真夜中に近い時間だった。
自分の部屋に帰って、何も考えずに眠りたいところだったが…やはり
諸々確認や報告をしなければいけないだろうと、黒川の事務所に向かう。
少し、落ち着いてみれば…、腹の立つことばかり。
抱えている問題の元凶は、すべて、黒川にあるような気がする。


重たい足取りで階段をあがり、事務所の扉を軽くノックし、中に入る。
中には一ノ宮と、リー、そして黒川がいた。



「…イツキくん、心配しましたよ。…リーくんから、横浜で別れたと聞いて、ずっと待っていたんですよ。電話も繋がらないようですし…」
「一ノ宮さん…。ごめんなさい。…電話、電池、切れちゃって…」



デスクに向かっていた一ノ宮は立ち上がり、心配気に、イツキに声を掛ける。
黒川とリーはソファに向かい合わせで座り、何か書類を見ているのか顔を上げることもない。


イツキは、一ノ宮には軽く頭を下げ、微笑んでみせるのだけど
奥の二人にはどうして良いのやら見当も付かずに、扉の前に立ち尽くす。


一ノ宮はイツキの傍まで行き、とりあえずどこかに座ってみればと手を差し伸べる。
それでも、黒川の隣に座る気には、到底、なれない。




「……マサヤ。……俺、ちょっと、……話があるんだけど……」
「…どこぞで男とヤってきた話なら、いらん。…淫売め」


どうにか、イツキが声を掛けると……ようやく黒川は顔を上げ、イツキをチラリと睨む。
リーから、今日の出来事をどう説明されたのかは解らないが、イツキが南屋と二人で会っていた事は知っているようだった。

南屋がイツキに声を掛ける所を見ていたのか、それとも、南屋が後から喋ったのか。
どちらにしろ、リーの、イツキへの印象は、悪い。





posted by 白黒ぼたん at 23:00 | TrackBack(0) | 日記
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