2016年09月07日

理由・3






「…お兄ちゃんさ、俺と組まない?…ビデオ、撮らせてよ」
「撮りません。……横浜の事務所って、秋斗さんが仕切ってるんですか?」
「実質、そうなんじゃないの、社長のコレなんだし。…お兄ちゃん、売れると思うんだよね。今日は、本当は、その事を社長に相談に来たんだよ」


南屋は、意味深に小指を立て、ニヤリと笑い、そのままの様子で、イツキにビデオを撮らせろと声を掛ける。
イツキはクリームソーダのストローを咥えたまま、ムッとした表情を浮かべ、自分も、小指を立ててみせる。


「……秋斗さんは、……黒川社長の、……コレじゃ、ないでしょ…?」

「ん?でも、よく、二人で連れて歩いてるの見るけどなぁ…。…お兄ちゃん、連絡先聞けなかったけど、こっちに来たら解るかなって思って。ビンゴだったよ。ね、ギャラ、弾むからさ……、社長を通さないと、駄目なのかな?」

「通したって駄目です。…そんなの、許すはずないでしょ!」

「なんで?」


逆に、南屋にそう尋ねられて、イツキは答えに詰まってしまう。
すっかり空になったグラスをテーブルに戻し、大きく肩で息をする。


そして自分が、自分が思っていた以上に、黒川と秋斗の事を気にしていたのだと知る。




「……おっ、黒川社長、ご無沙汰しております」

向かいに座る南屋が突然中腰になり、頭をぺこりと下げる。
その視線の先には、こちらへ向かって歩いて来る、黒川の姿があった。



posted by 白黒ぼたん at 23:34 | TrackBack(0) | 日記
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