2016年09月12日
理由・6
黒川も日本酒のグラスを傾けながら、ちらりと、イツキを見る。
イツキはどこか不機嫌そうに、それでいてとろんと、眠たそうな目をしている。
…これは、おそらく、酒に酔っているな…と、黒川は鼻で笑い、取り付く島もない。
「……マサヤ、……聞いてる?」
「ああ、はいはい。……お前、どこからそんな話を仕入れて来た?」
「……どこだって、いいじゃん。……みんな、……そう思うよ…」
「何だ?……ヤキモチか?」
「そうだよ」
半ば適当にやりとりをしていた黒川は、イツキの返答に驚き、次の言葉を無くしてしまった。
イツキは、残っていた日本酒を、一気に煽り、口元を手の甲でぬぐう。
「……俺、……帰る」
「……は?」
「もう、マサヤの傍にいるの、やだ。……帰る」
そんな事を言い出し、やおら立ち上がるイツキを、黒川は慌てて引き止める。
腕を引くとイツキは簡単によろめき、黒川の隣に、倒れるように座り込む。
「何だよ、イツキ?…何を拗ねてる?」
「…俺ばっかり、…そんなこと考えてるの、…ズルイ」
「…そんな事?」
「マサヤと秋斗くんの事とか…。ああ、もう、解んない。……やだ、やだ…」
イツキは、かなり、悪酔いしている様子だった。
posted by 白黒ぼたん at 23:22
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