2016年09月16日

穏やかな時間






憑き物が落ちたようにイツキが品川のマンションに戻ったのは、
妹の一件が済んで10日ほど経った頃。すでに8月。

梶原が誘っていた夏フェスとやらは、明日に迫っていたけれど
場所が横浜だと聞いて、イツキは理由も言わずに行くのを拒んだ。



「……ちょっと、嫌…、だから………」
「…ふぅん」



仕方なく、いつもの駅前のショッピングモールのフードコートで、たこ焼きを食べる。
それでも、穏やかな時間は、それだけで少し楽しいものだった。


「…でも、そうすると、どこも遊びに行けなくなっちゃうな…。俺、もう、夏期講習始まるし…」
「梶原、受験、だもんね。…大変なんでしょ?」
「まあな。…お前は?……どうするか、決めたの?」
「俺は……」


そう言ってイツキは口を噤む。
こちらに戻れば戻ったで、また新しい問題に直面する。


「とにかく、学校、卒業して…、それから考える…」
「どっか進めばいいのに。今からでも、どっか狙えるぜ?…多分」
「とにかく卒業してからね。……いっこ、いっこ片付けないと、俺、パンクしそう…」



イツキは笑って、コーヒーを飲んで、どこともなく向こうの方へ視線をやる。
どこか憂いのあるその表情に、梶原は、また一段と色っぽくなったな…と、無駄な発情をするのだった。





posted by 白黒ぼたん at 23:00 | TrackBack(0) | 日記
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