2016年09月18日

愚痴・1







品川のマンションに一ノ宮が来た。
前々から頼んでいたのだが、洗剤や日用品や保存のきく食料品や、かさ張る重たいものを持って来てくれたのだ。
イツキも、車から部屋まで運び入れるのを手伝う。

作業が終わると近くの店に食事に行く。
『イツキに会った時にはきちんとした食事を取らせる』というのは、黒川から一ノ宮への、約束事のようだった。



「…今日、マサヤは?」
「事務所にいますよ」
「ふぅん。…じゃあ、自分で来ればいいのにね」


近くにある和食の店で、イツキはカツ丼を頬張りながら、そう言って笑う。
一ノ宮も同じ食事を頼み、小鉢のお浸しを食べながら、イツキを見て微笑む。


「結局、俺の扱いは…雑なんだよね。…あいつ」
「まあ、まあ…。それだけあなたには甘えているんですよ」
「そうなの?…違うでしょ?…俺のことなんて、どうでもいいと思っているんでしょ?」


そんな愚痴めいた事を言えるのも、一ノ宮にだけなのだ。
それは一ノ宮にも解っていて、本心ではないイツキの言葉に、いやいやと手を横に振る。


「社長は、あなたがいないと駄目なんですよ。ご存知でしょう?」
「そんな事ないよ。…他の子だって、いるでしょ?」




横浜の……秋斗の事を言っているのだと……、一ノ宮は思い当たる。
黒川の心無い言動ひとつひとつに心を痛めるイツキを、一ノ宮は心底、気の毒だと思う。




posted by 白黒ぼたん at 21:55 | TrackBack(0) | 日記
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