2016年09月21日

愚痴・終







食事も終わりお茶を飲みながら、最後に甘い物でも頼もうかと話している最中、
一ノ宮の電話が鳴る。
声のトーンや様子から、聞かずとも、相手が黒川だと解る。


「……今からですか?……はい、はい、すぐに戻ります。…ああ、手土産は浅草の葛餅がよろしいかと……先に…、……もしもし?……もしもし?」


どうやら話の途中で電話は切られてしまったらしく、一ノ宮はスマホの画面を眺め、困った顔をする。
「…マサヤから?」と、イツキが尋ねると、一ノ宮は「はい」と答え、これから急ぎ戻らなければいけない事を伝える。


「申し訳ない。せっかく、イツキくんとお話しが出来る機会だったのに…」
「大丈夫です。…ああ、俺、ここからなら自分で帰れます。一ノ宮さん、早く行った方が良いでしょ?」


イツキがそう言うと一ノ宮はさらに困った顔をして、頭をぺこりと下げる。
…我儘で横柄な男に手を焼いているのは、自分だけではないのだなと、イツキは小さく笑った。






「…イツキくん」
「はい?」

店を出て、駐車場の車の前で、一ノ宮はドアに手を掛けながら振り返る。

「…あなただけなのですよ、本当に」
「…え?」

「……社長のことを、名前で呼ぶのも。……社長の車の助手席に乗るのも。…あなただけです。
彼の全てを信じて、受け入れて欲しいとは、とても言えませんが……
どんな時でも、あなたは、黒川にとって特別なのだということは、忘れてはいけませんよ」



そう言って、一ノ宮は車に乗り込み、行ってしまった。

イツキはその姿を見送りながら、押し黙り、一ノ宮の言葉の意味を、考えていた。






おわり

posted by 白黒ぼたん at 21:23 | TrackBack(0) | 日記
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