2016年10月05日

台風の日・8






「……先輩は、あの時…、もう、俺のこと、…知ってたんですよね…」
「……ああ」



そう答えて、…気まずくなってしまった。
清水はイツキと出会った最初から、イツキが、黒川の「女」だと知っていて、自分が西崎の息子だということを隠して来たのだ。
騙した、と言う訳ではないのだが……黙っていた。
結果的にそれがまた、問題を招いた事に、違いはない。


清水は立ち上がり、備え付けの冷蔵庫に向かい、水のボトルを手に取る。
丁度、イツキが座るソファの斜め後ろの位置。イツキの憂いた横顔が見える。


「…もし、最初から、……俺がお前のこと知ってるって言ってたら、どうした?」
「そんなの。……むちゃくちゃ警戒して、他の人には知られないように、距離を取って、…関わらないようにして……」
「じゃあ、逆に。本当は、何も…、何も知らない、何も関係のない、ただのフツーの高校生だったら、…どうした?」


清水がそんな事を言い出すので、イツキは思わず振り返り、清水を見る。
水のボトルに口を付けながら、見せたこともないような、真摯な表情を浮かべる。
イツキは何故か、胸と顔が熱くなり、誤魔化すように顔を背ける。


「…ど、どうしたも何も…、ないです。……普通に、学校の人の…、一人だなって…」
「……そっか。じゃあ」




言いかけて、少し間が開く。

気配を感じた次の瞬間には、イツキの真後ろに清水がいて、ソファの背もたれ越しに、イツキの肩を抱き締める。


「…じゃあ、……意外とベストだったのかもな。俺たちの、始まり方って……」



posted by 白黒ぼたん at 06:36 | TrackBack(0) | 日記
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