2016年10月05日

台風の日・9







背中から抱き締められ、清水の顔が、イツキの首筋に当たる。
前に回された手は、もう少しでガウンの袷に吸い込まれそうで…、吸い込まれないで、困る。


「……ベスト、なんて、……そんな。どう始まったって…、俺と先輩は……、……無理」
「どうして?」
「……だって。……俺は、……マサヤので。……先輩は、西崎さんの、息子で……」


イツキは必死に言葉を繋ぎながら、清水の手を解こうと、清水の手に、手をやる。
多分、自分より大きな手は、黒川の手とは、肌触りが違う。
自分の胸の上から引き剥がそうとしているのに、どうしてだか、指が絡みついてしまう。
耳元に、清水の唇が触れて、くすぐったいのに、笑う…どころではなくて。


「先輩。…今日は何もしないって、言った…」
「ああ。……でも、これくらいは、いいだろ?」
「先輩。……彼女さん、いるって、聞いた。……学校の、保健の……」
「ああ。お前にだって、黒川さん、いるじゃん…」



「……うん」



清水の言葉に、一瞬、イツキの気がそれる。
清水がイツキの耳たぶにキスをしようとした瞬間、イツキは勢いソファから立ち上がり、清水の手を払う。



「…そう。俺には、マサヤがいるから。……先輩、駄目でしょ?」



そう、わざと冗談めかして明るく言って、イツキは無理な笑顔を浮かべてみせるのだった。



posted by 白黒ぼたん at 23:00 | TrackBack(0) | 日記
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