2016年10月08日

台風の日・10







もう雨は止んだようだと、イツキは慌てて帰り支度を始める。
まだ服が湿っていると渋る清水をよそに、イツキは服を着替え、大丈夫だと言い張る。

せっかく、いい雰囲気だったのに、少々、気が急いてしまったかと、清水は思う。
けれど、今日は『しない』約束だったのだし、ガウン姿のイツキを無理やり襲うようでは、自分も駄目だな、と思う。


「…髪の毛ぐらいは綺麗に乾かして行けよ?…風邪でも引かせたら、黒川さんに悪い」


そう言う清水に、イツキは少し…微妙な顔をして…、……黙って、こくんと、頷くのだった。




「……なあ、イツキ…」
「……はい?」


部屋を出る間際に、清水が呼び止める。


「…お前さ、……高校卒業して、働いて、一人で生きていってみたいって…言ってたじゃんか…」
「……うん」
「……その時はさ、お前の傍には、誰がいるの?」



…イツキは、ドアの取っ手に手を掛けたまま清水を見上げるのだけど…
自分でも解らないその答えを、口にすることは、出来ない。



「俺でも、いいのかな?」



そう尋ねる清水に、イツキは
小さく、小さく……微かに、
自分自身に確かめるように、頷くのだった。




posted by 白黒ぼたん at 00:08 | TrackBack(0) | 日記
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