2016年11月15日

ちょっとした出来事







その日、時間があったイツキは伸びすぎた前髪をどうにかしようと、知り合いの美容室を訪れた。
事前に予約を入れた訳ではないので、断られても仕方がないと、店を覗き込むと、
イツキの姿を見つけたのか、一人の男が中から飛び出して来た。



「……イツキちゃん!……ヒマ?」
「…ミツオさん、こんにちは。……ちょっと、切って貰えたらなって…思って…」
「ああ、もう、後でいくらでも切ってあげるから…。お願い! 少し、手伝って欲しいんだけど…」


そう言って男は…、以前、電車内でイツキに痴漢行為をして以来、何となく知り合いになったミツオは、イツキの手を引いて店内に連れ込むのだった。





「ヤバいんだよ。スタッフ引き抜かれて…、今、俺と店長の二人しかいないんだよ。
イツキちゃん、受付に座っててくれるだけでいいから、いてくれないかな。
お客さん来たら、カード預かって、手荷物預かって、名前書いて…、コーヒー入れてあげて、雑誌並べてくれるだけでいいから。
あと、このタオル、たたんで欲しい…、あと、ノベルティのハンドクリーム、箱に入れて…、あと、この封筒の裏にハンコ押して欲しい……、お願いっっ」



矢継ぎ早に、半ば泣きつくようにミツオはイツキに仕事の指示をして、自分は自分の仕事に戻って行った。
イツキは訳も解らず受付カウンターの中に入れられ、ただ、あたりをキョロキョロ見渡す。

すでに店内は数名の客が入っていて、ミツオと、店長らしいヒゲ男が、忙しなくシャンプー台とカット台を行ったり来たりしている。
そうこうしている内に、本当に新しい客が入って来てしまい、イツキはとりあえず、「いらっしゃいませ」と言ってみるのだった。




posted by 白黒ぼたん at 00:02 | TrackBack(0) | 日記
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