2016年11月16日

猫の手







突然仕事を任されて、当然、上手くこなせるはずはなかったけれど、
それでも、以前、一日だけバイトをしたスーパーとは違い、ここはまだ何となく居心地が良かった。

最初に入って来た女性客は常連らしく、ミツオと店長に挨拶をすると、自分から受付に手荷物を出す。


「…あれ、君、新しく入った子?」
「………い、え…今日は…、ちょっと…手伝いで……」
「バッグ、後ろのロッカーに入れてくれる?…あ、鍵、頂戴。…コーヒー貰っていいかしら?」
「…はい。…えっと…、砂糖とミルクは…」
「大丈夫よ。…ふふ、猫の手も借りたいって感じなのかしら…」


勝手知ったる様子で自分でコーヒーを入れると、女性客はソファに座り、雑誌を眺めながら大人しく順番を待つ。
その後も数名の客が入るが、皆、そんな感じで、特にイツキが緊張し、慌てふためくことも無かった。

客のほとんどがリピーターの予約客で、年代も20代後半から30代の落ち着いた女性ばかり。
イツキは新しいコーヒーを淹れ、ロッカーの手荷物を整理し、手が空くと試供品のような小さなハンドクリームを、店の名前の入った箱に入れる作業をした。




会計や、電話が鳴ると、ミツオが来る。
その都度イツキに、あれこれ小さな頼み事をする。

「…ありがとう。助かる。…本当に、ありがとう」

そう言われると単純に嬉しくて、イツキはお腹のあたりが、くすぐったくなるのだった。





posted by 白黒ぼたん at 00:08 | TrackBack(0) | 日記
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