2016年11月17日

ミツオ






美容室は23時クローズだったが、後の予約が入っていなかったこともあり、今日は早めに締めてしまった。
最後の客を見送ると、店内の清掃もそこそこに、イツキとミツオとヒゲの店長は受付前のソファに沈み込む。



「……いや、本当。……参った、参った……」


ヒゲ店長は大きなため息をつき、凝り固まった腕や肩を伸ばし、回す。
本来なら4、5名のスタッフで対応するところを、イツキを含めた3人で乗り切ったのだ。
大きなミスも無かったのが、不思議なくらいだった。


「イツキくん、だっけ。本当にありがとう、助かったよ」
「いえ…、俺…、べつに…」
「高校生?ミツオの友達?綺麗な顔してるよね、モデルさんか何かかな?」


そんな事を言いながら、ヒゲ店長はスマホを手に取り、着信があったのか、その場から離れる。
イツキはまだ気が張っているのか落ち着かない様子だったが、それでも、多少なりとも役に立てた事が嬉しかった。

ミツオも大きな伸びをして、首を左右に、コキコキと鳴らす。




「…ウチのエースだった人がさ…、もともと、店長とはアレだったんだけど…、独立するなんて言って、他の子みんな連れて抜けちゃってさ…」
「ミツオさんは、残ったんだ?」
「俺は店長に育てて貰ったからね、そんな事はしないよ」



そう、至極真っ当な事を言うミツオを、イツキは少し意外だなと思いながらも感心する。
多分、そんなに悪い人間ではないというのは、解っていた。

……電車内で痴漢を働き、そのままトイレに連む男だけれど……、

本当に嫌いな男ならば、イツキもこうやって頻繁に、美容室を訪れる事はなかっただろう。




posted by 白黒ぼたん at 23:03 | TrackBack(0) | 日記
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