2016年11月21日

置いてけぼりマサヤ






「…知り合いの店って、何だ?…飲み屋か?」


朝。
出掛けにコーヒーを飲んでいたイツキに黒川が尋ねる。
イツキは最初、何の話をしているのか解らない風だったが、夕べ、黒川にそれを話した事を思い出した。


「違うよ。美容室。すぐ近くだよ。前に話したこと、無かったっけ?」
「お前なんかが手伝いに行って、なんの役に立つんだよ?」
「……受付にいるだけでいいって…。あとは、掃除とか…イロイロ…」
「…ふん」


イツキに仕事などできるはずがないと高を括っているのか、黒川は馬鹿にしたように鼻を鳴らす。
それでもイツキは気にしない様子で、コーヒーを飲み終えると、カップをキッチンに持っていく。


「マサヤは?今日も出掛けるの?」
「…ああ」
「ふぅん。行ってらっしゃい」



ソファに座り新聞を読んでいる黒川に声を掛け、イツキは玄関へと向かった。



美容室は、とりあえずヘルプの人員が来る事にはなったのだが、それは夕方からで、
それまでの時間、夏休みの間だけでも、イツキに手伝いに来て欲しいのだそうだ。
ミツオと、ヒゲの店長に頼まれ、イツキは戸惑いながらも、悪い気はしない。
自分が、何か、人の役に立つことが…、仕事めいた事に関われるのが嬉しかった。



玄関で靴を履いていると、黒川が何かのついでのように、イツキの傍までやって来る。



「……夜には、帰るのか?」
「ん。マサヤは?」
「…そうだな。…帰るかな…」
「…ん。行ってきます」


そうして、イツキはひらひらと手を振って、一人、部屋を出て行くのだった。



posted by 白黒ぼたん at 21:54 | TrackBack(0) | 日記
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