2016年11月29日

蕎麦は十割







黒川は、イツキが手伝いに行っているという美容室が入るビルの、正面に立っていた。
繁華街の目抜き通り。一階には女性向けのセレクトショップがあり、美容室は二階。

様々な人種が行きかう雑多な街とは言え、昼日中の賑やかなこの時間に
黒服の強面が店先に仁王立ちしている姿は、一種異様な光景だった。



「……どうしました、社長?」


急に立ち止まった黒川を不思議に思い、一ノ宮が声を掛ける。
事務所に詰めていたのだが、腹が減ったと、歩いて、近くの蕎麦屋に行く途中だった。


「……いや…」


黒川は何事も無かったようにそう言って、歩き出す。
一ノ宮は、黒川が何を見ていたのかと、ビルの上階に視線をやるのだけど…、およそ、黒川が興味を引きそうなものは見当たらなかった。








「……あの、ビル。……どこのだ? 前は関西のケツ持ちが付いていただろう?」
「………は?」


蕎麦を待つ間、板わさと焼き海苔で軽く日本酒を飲む。
ふいに黒川が尋ねるので、一ノ宮は何の事だろうかと思ったが、先ほど見ていたビルの話だと気付く。


「……ええと、あそこは…、カツキビルの第三か第四ですね…。…ええ、以前は関西系でしたが、今は新規のゼネコンが入って問題は無いかと思いますが…」
「………ふん」



黒川は面白くなさそうに鼻を鳴らし、あとは黙って、日本酒を啜る。

一ノ宮は黒川を見遣り、…今度はどんな事案に首を突っ込んでいるのだろうかと…、小皿に醤油を垂らしながら思うのだった。




posted by 白黒ぼたん at 23:32 | TrackBack(0) | 日記
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