2016年12月05日

休憩中






昼間。事務所の近くのコンビニで、一ノ宮はイツキと会う。


「…おや、イツキくん。珍しいですね、昼間にこちらに来ているなんて…」
「俺、今、バイトしてるんです。すぐ近くの美容室で」
「…え?」


少し驚いた一ノ宮の顔を見て、イツキは、一ノ宮が何も知らなかった事を知る。
黒川と一ノ宮の間では、話は、何でも共有されているものだと思っていたけれど、自分の日常など、まあ、大した話でもないということなのだろう。


実際は、その逆なのだけど。


「バイトですか、ああ、良いですね。色々、体験するのは良い事ですよ」
「ちょっとしたお手伝いってぐらいだけど…。でも…、…うん…」


気持を上手く言葉にできず、それでも、楽しそうにはにかむイツキを見て、
一ノ宮は、イツキが今、新しい何かを見つけ掛けているのだと思う。
それは、多分イツキにとってとても良い事だと思うのだけど、反面、不安の影もチラチラと見える。


「社長は…、もちろんご存じなんですよね?」
「もちろんだよ!…俺に仕事なんて出来ないって馬鹿にしてるけどね。あ、…一ノ宮さん、ごめんなさい、俺、もう行かないと…」
「ああ、引き止めて申し訳ない。また今度ゆっくり話しましょう」


一ノ宮は微笑み、イツキはひらひらと手を振って、コンビニの前で別れる。


一ノ宮がイツキの背中を見送っていると、イツキは、先日黒川が見つめていたビルの方へ歩いていくのだった。




posted by 白黒ぼたん at 00:23 | TrackBack(0) | 日記
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