2016年12月05日

偵察






「いらっしゃいま……せ。……ご予約は…されていないですよね…。えーと……」



美容室に突然現れた梶原に、イツキは驚きながらも、どうにか応対する。



「…こちらのカードにお名前と、ヘアスタイルに関するご質問と…。…今日はどういったご希望でしょうか…」
「…え、えっと…。全体的に切ってもらって…、で、…流してもらって……」



バイトをしているイツキの様子が見たくて、半分冷やかしで美容室に来てみたのだが
実を言えば梶原は、こんな街中の、オシャレな美容室を利用することなど、まず、無い。
目の前にいるのがイツキだと思っていても、やたら緊張する。
髪型だって短ければいい。別に、希望の形など、無いのだ。



「…只今のお時間ですと…、30分ほどお待ち頂きますがよろしいですか?」
「……うん。……なんか、変な感じだな…。……お前も、お前じゃ無いみたい……」



梶原がそう言って、イツキもやっと少し、仕事モードから切り替わる。
上目遣いで梶原を見て、少し困ったように唇を尖らせて、手元のカードをぱらぱらと捲る。



「何しに来たんだよ。梶原。こんな所まで…」
「いや、だって。お前が仕事してるなんてどんな感じかなって…、見たいじゃんか…」
「…物好き。…いいけど。…予約優先だから時間掛かるよ?」
「…お、おう!」



梶原の返事は必要以上に大きな声になってしまい、
イツキはつい、くすっと、笑ってしまうのだった。




posted by 白黒ぼたん at 23:27 | TrackBack(0) | 日記
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