2016年12月10日

変質者







不審な男は、


黒川だった。


黒川は西崎やその周りにいる男たちとは違い、見るからにヤクザという風貌ではない。
ただ、筋肉質の体にきちんとした仕立てのスーツを纏い、多少、険しい目つきをしているだけなのだが…
圧倒的な存在感と威圧感がある。

まして、美容室の入り口がある表通りには、若い女性向けのセレクトショップがあるのだ。
そんな場所に、あの男が立っていては、いらぬ心配を掛けても仕方がないだろう。



「…ごめんなさい。あの人…、俺の…知ってる人です。…俺、帰ります…」


イツキは驚くやら、何か、恥ずかしいやら。
慌てて身支度をして、店長やミツオに頭を下げて、美容室を出るのだった。






「……マサヤ、……何、してるの…?」


ガードレールに腰を預け、煙草を吸っていた黒川にイツキが近寄る。
黒川は二階の美容室と、イツキの顔を交互に見遣り、ふふ、と笑う。
下からは光の加減で、あまり、店内の様子は見えないようだ。



「…なんとなく、な。事務所に戻るのに、前を通るからな…。
普通だな。お前が働けるなんて、どんな怪しい場所なのかと思ったんだがな…」

「…普通の美容室だよ。……マサヤがいる方が、よっぽど怪しいよ…」

「…そうか?……ふふ」



何が可笑しいのか黒川はそう言って鼻で笑う。

多分、可笑しいのは、イツキの仕事っぷりが気になっている黒川自身なのだろう。

様子を伺い、終わる時間を見計らい店の外で待つ、など、まるでストーカーや変質者のようだと、


黒川にも、多少、自覚はあるようだった。





posted by 白黒ぼたん at 23:31 | TrackBack(0) | 日記
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