2017年01月06日

一ノ宮、しみじみと思う






やり残した書類があると、一ノ宮は珍しく午前中のうちに事務所に行く。
鍵を開け、中に入り、デスクに荷物を置いて、ブラインドを開ける。


「……!!!」


その時になってようやく、ソファの上に黒川が寝転んでいるのに気づき、声にならない叫び声をあげる。
もっとも黒川の方は気が付いていたらしく、薄目を開けて一ノ宮を見ると、ふんと鼻を鳴らす。



「……社長、どうしたのですか…?こちらにお泊りになったのですか?
…イツキくんの所に行かれたのだと思っていましたが……」
「……ああ」


黒川はもぞもぞと身体を起こし、無精者のように髪の毛を掻きながら、テーブルの上の煙草に手をやる。
一ノ宮は部屋の隅の流しに向かい、コーヒーを淹れるための湯を沸かす。



「…イツキの所は夜中までいたんだが…、途中、煙草を切らしてな。……取りに来た」
「…戻られなかったのですか?」
「午後から横浜だろう。あいつも今日から楽しいガッコーだ。品川に帰るだろうよ」
「おや。…ではまた、寂しくなりますね」


コーヒーカップをテーブルに置きながら一ノ宮がそう言うと、黒川は少しむっとした顔で一ノ宮を見上げる。
本気ではない。冗談でもない。そんな事は解っている。



「……あまり、あいつと一緒に居過ぎると、無駄な情が沸く。…鬱陶しい…」



黒川はそう言って、コーヒーを飲む。


一ノ宮は、黒川を横目で見遣りながら…

無駄でも、情が沸いている自覚はあるのだなぁ…と、しみじみと思った。




posted by 白黒ぼたん at 23:00 | TrackBack(0) | 日記
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