2017年01月15日

時間は少し遡り






昼間、教室をすぐに出たイツキは、進路相談のための資料室へ向かった。
梶原に言われた事は、実は、そう、傷つく程の事ではなかった。

今まで自分が不真面目だった事も学力が足りていない事も、改めて言われなくても、自分が一番良く知っている。

資料室には大学や専門学校などの案内や書類が並んでいた。
この手のものにはまるで縁の無かったイツキは、どれを見ていいのかすら解らなかったが、とりあえず、「首都圏専門学校ガイド」という冊子を手に取る。
ぱらぱらと捲ってみるも、やはり、よく解らない。


実際、美容師になりたい訳ではない。
なりたくない訳でもない。


まだ本当に、何も決められず、ふわふわした状態で…
その中で、自分が今、何を選べて進めるのか…少しでも見えればいいのに、と。
高校三年生のこの時期にしては遅過ぎる気持ちで、ふうと、大きなため息をついた。





「……おや、熱心な生徒がいると思ったら、…君か。……どうしたの?」

ふいに後ろから声を掛けられる。振り返るとそこには一番会いたくない男、加瀬がいた。

「……ちょっと見てただけです。なんでもないです」

イツキは持っていた冊子を棚に戻し、資料室を出ようと、加瀬の横をすり抜ける。
すかさず加瀬はイツキの腕を掴み、自分に引き寄せる。
もっとも、開いたままの扉の前では、そう悪い事も出来ない。


「…君には、こんなもの、必要ないでしょ?……相談なら、私が乗るよ?
…なぁんでも、ね」


そう耳元で囁き、ニヤリと笑うだけだった。



posted by 白黒ぼたん at 18:10 | TrackBack(0) | 日記
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