2017年01月17日

時には不審者のように







前面がガラス張りの店舗の前にイツキは立ち、不審者のように中の様子を伺う。
ミツオの店と同じくらいか…もう少し広い感じの店。
客は若い女性が多く、ネイルなどもやっているのか、そんなアイテムの並ぶ一角もある。
揃いの黒いシャツを着たスタッフは忙しそうにキビキビと動き、しかも、皆、笑顔を浮かべていた。


扉が開いて、客が出てくる。
男性スタッフが外まで見送り、頭を下げる。
思わず見入っていたイツキは、そのスタッフと目が合ってしまう。



「……ご利用ですか?……今なら待ち時間もありませんよ?」



開いた扉の前で、そうにこやかに言われて、イツキはつい、中に入ってしまった。




髪の毛はつい数日前に、ミツオに、カットして貰ったのだけど
仕方なく、後ろを、一センチだけ切って貰った。
担当したスタイリストはお天気の話から、自分の昨日の夕食の話まで、実に楽し気に語り、
そして、イツキの茶色い猫っ毛や、男子とは思えないほどのきめの細かな、吸い付くような白い肌を褒めた。

『どこか事務所とか入ってるんですか?…モデルさんとか?』

そう言われても、どこの事務所の話なのかは解らない。
イツキは曖昧に微笑み、『いえ、別に』などと言い、会計を済ませ、逃げるように店を出る。


レジのカウンターの片隅に「スタッフ募集」のペーパーがあったので、ついでのように、持ち帰ってみる。


「有・資格」も「実務経験2年以上」もハードルが高かったが、なにより、
スタッフのあの笑顔は、真似が出来ないなぁ…と、イツキは思うのだった。





posted by 白黒ぼたん at 23:10 | TrackBack(0) | 日記
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